統計画像の落とし穴

SPECTの評価法として統計画像が頻用されている。そればかりか、第109回と第110回の医師国家試験に、脳血流SPECTの問題が出題されたが、統計画像が用いられました。あたかもそれが標準であるかのように。しかし、本来の統計ではなく、健常者データベースと1人の被験者の画像を比較するjackknife検定でした。

通常の統計で、1例と複数を比較するでしょうか。元々、統計画像に用いられるSPMiSSPは、群間比較するためのものでした。

統計画像を使うにあたり、注意しなければならないことがあります。

まず、SPECT・PET画像を統計画像とするためには、空間的標準化により、脳の形を全例同じ形にする必要があります。空間的標準化で不具合があれば、そこが「異常値」と判定されます。ですから、空間的標準化で正しく「標準化」されたことを確認する必要があります。

この、統計画像の過程については、別ページで解説します。

次に、SPECT機種・吸収補正・フィルター・患者の状態(閉眼など)など撮像条件です。健常者データベースで用いられた条件と、その1例の条件が、全く同じでないならば、統計画像は、例えば機種の違いを描出します。閉眼・開眼が異なれば、一次視覚領の違いを描出します。ここが、MRIなど形態画像とPET・SPECTの機能画像の違いです。

統計画像を見る前に、データベースの撮像条件と自施設の条件が同じかどうか、確認してください。本邦で出回っているソフトには、撮像条件が書かれています。できれば自施設で健常者データを収集することが望ましいです。

統計画像の落とし穴にハマらないためにも、普段から、統計処理前の元画像を見るようにしたい。そうすれば、統計画像がなくても読影することができるようになる。ただし、通常の画像は主観的に読影してしまうこともある。客観性のある統計画像を読影の参考にすることは間違いではない。



ちなみに、私は統計画像を必ず見ます。統計画像を批判的に書きましたが...

神経内科医の通常の読影は、主観的になりがちです。放射線科の先生方の読影はより客観的です。なぜなら、神経内科医は患者を診てそれを元に病巣を想像し、画像を見るからです。見落としをなくすためには、統計画像は便利です。そのためにも、正しい統計画像を作る必要があるのです。

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