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進行性核上性麻痺 progressive supranuclear palsy: PSP

進行性核上性麻痺(PSP)の垂直性核上性注視麻痺 上方注視麻痺は下方注視麻痺に先行する。ただし、上方注視麻痺は加齢によっても障害されるので、下方注視麻痺が進行性核上性麻痺の特徴。 進行性核上性麻痺の分類 PSP-Richardson syndrome: PSP-RS 垂直性核上性注視麻痺、初期からの姿勢保持障害を中核とする典型的なPSP。 PSP-predominant parkinsonism: PSP-P 寡動・筋強剛に左右差があり、振戦を伴い、初期にはL-DOPAが奏功、転倒や核上性注視麻痺・認知機能障害は進行するまで出現しない。 PSP-progressive gait freezing: PSP-PGF 今井・楢林らが1974年純粋アキネジアとして報告。L-DOPA無効のすくみ足。小声・無声、小字症を伴う。眼球運動障害や姿勢保持障害の出現は遅い。 PSP-predominant frontal presentation: PSP-F 行動異常型前頭側頭型認知症で見られるような認知機能障害や行動異常が主訴。 PSP-predominant ocular motor dysfunction: PSP-OM 眼球運動障害を主訴。 PSP-predominant speech/language disorder: PSP-SL 発語・言語障害を主訴。発語失行や進行性非流暢性失語が前景。 PSP-predominant corticobasal syndrome: PSP-CBS 失行・無動・筋強剛などCBSを主訴。 PSP-predominant postural instability: PSP-PI 姿勢保持障害を主訴。 PSP-predominant cerebellar ataxia: PSP-C 四肢・体幹の小脳性運動失調を主訴。初期は脊髄小脳変性症と診断され、比較的早期にRichardson症候群が出現する。本邦では病理診断のPSPの1〜2割を占めるが、欧米では極めて少ない。Movement Disorder Socity(MDS)の診断基準(2017)では含まれていない。 PSP-primary lateral sclerosis: PSP-PLS 上位運動ニューロン徴候が前景にたつタイプで、構音障害・嚥下障害を伴う。まれ。MDS診断基準(2017)

カラースケールとグレースケール

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医用画像で注意すべきは、カラースケールの並び方が、必ずしも色の明るさ、明度とは一致しない点である。 例えば、論文投稿でのグレースケール画像は無料だが、カラーの画像が有料のことがある。あるいは、図書館で本のカラーのPET画像を白黒のコピー機でコピーする。 そこで単純にRGBの画像をグレースケールにすると、つまり、カラー写真がモノクロ写真になると、下図のようになる。 RGBの色は、明度によってグレースケールに置き換わる。画像右にあるrainbowのカラースケールを単純に明度によってグレースケールにすると、下と上が黒になり、真ん中が白。最も代謝が高い被殻が、低い部分と同じ色で表示されてしまう。代謝が高い部分と低い部分が同じ色になってしまうのである。 本来グレースケールを用いた 18 F-FDG PET画像は、下図のような画像にならなければならない。 このような現象があるため、核医学学会は、ルーチン画像はグレースケールを推奨している。これなら紙にコピーしてもカラースケールの逆転はない。 放射線科の先生方はグレースケールに慣れていらっしゃるが、脳神経内科医の多くはrainbowの方が異常を捉えやすいのではないかと思う。 正しいグレースケール画像の作成は、医用画像用のアプリケーションでDICOMデータを読み込み、表示を変更されたい。 日本医科大学大学院 医学研究科 脳病態画像解析学講座 活動報告 2015 年~ 2019 年 より

統計画像

 画像が数学の「行列」であるから、様々な算術が可能である。統計もその1つである。古典的には、画像に関心領域(region of interest、ROI)を設置し、ROI内のピクセル値の平均を測定、これを統計にかける。この項で解説するのは、画像のpixelあるいはvoxelごとの統計である。  ただし、それぞれの画素を統計処理するとき、比較する画像群の様々な条件が一致していなければ無意味な解析となる。通常の統計でも、比較する群で様々な条件が一致している(統計学的有意差がない)からこそ、仮説を証明することが可能である。脳画像ごとの統計処理では、これらに加え、脳の位置・形などの条件の一致も求められるということである。例えば、被殻の画素と側脳室内の画素の値を比べる意味はない。個々人で、脳の大きさや脳内の構造も異なる。大脳皮質の萎縮など加齢変化もある。同一人物の画像であっても、頭部のわずかな傾きで座標はずれる。ポジトロン断層撮影(positron emission tomography: PET)やsingle photon emission computed tomography(SPECT)装置によって、あるいは放射性薬剤や撮像方法・動態解析法によって、測定される画素の数値は変わってくる。  例えば、ある研究で健常者はA機種、患者はB機種を用い、B機種はA機種より後頭葉の集積が高いとする。患者群では全例で後頭葉の集積が上がり、統計は脳の病態と無関係に患者群は後頭葉が高いという結果になってしまう。  このようなことは、健常者は撮像の待機中に健常者はアイマスクあり、患者群はマスクなしとした場合も同じことが起こりうる。ちなみに、 18 F-FDG PET画像では絶食条件が守られないと、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)で低下する後部帯状回で集積低下することが知られている(1)。被験者の撮影条件などは日本核医学学会が作成したガイドラインを参照されたい。  次に、個々の脳を同じ解剖学的空間に落とし込む作業が必要になる。ある位置のvoxelが、同じ解剖学的部位でなければ統計処理をする意味がない。まず、同じ被験者の脳だけを使用する解析であれば、脳の位置を左右・上下・傾きを一致させれば同じ解剖学的空間を共有できる。例えば、functional MRIで連

医用デジタル画像は数学の「行列」である

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ここで言う「画像」は、医用デジタル画像を指す。 例えば、ロンドンのTower bridgeの写真をAdobe Photoshopで拡大してみよう。 画像が、画素 pixel の集合であることがわかる。 この画像は、パソコンなどディスプレイで表示される時はRGBというカラーモードで色が規定されている。RはRed、GはGreen、BはBlueである。いわゆる光の三原色である。ちなみに、印刷物などの色は、CMYK(Cyan・Magenta・Yellow・blacK)である。右の画像の紫色は、R 143、G 137、B 170という数値が割り当てられている。R・G・Bそれぞれが0〜255の幅があり、これらの組み合わせで256×256×256=16,777,216色が表現可能である。RGBでは光が混ざって表示されるため、R・G・B全てが0の場合は黒、全てが255では白となる。このように、pixelは数値によって色が決まる。 これは、医用デジタル画像にも当てはまる。 右は 18 F-FDG PET画像である。 ディスプレイではRGBで表現される。ただし、多くの医用デジタル画像ではカラースケールが割り当てられる。右図ではrainbowと称されるカラースケールを使用し、色の数値は脳内のブドウ糖代謝を反映したstandardized uptake value(SUV)である。0〜8のSUVが256に分割され色が割り当てられている。赤がSUV 8、緑が4程度、黒が0に相当する。デジタル写真と同様、pixelが並んで形成されているが、この色はSUV値を表現している。 画像は数字の羅列であり、つまり、高校の数学で学んだ「行列」である。 画像は、3次元に数字が羅列したデータである。 したがって、引き算・掛け算など、 同じサイズの行列なら 可能である。 通常の脳血管撮影では骨と造影剤が入った血管が描出されるが、骨のデータを引き算すると、Digital Subtraction Angiography(DSA)の画像を得られ、血管が見やすくなる。 同様に、画像のボクセル値ごと動態解析をしたり、統計処理したりすることが可能である。 ただし、それぞれの行列の数値が存在する、解剖学的な座標が共通でなければならない。 例えばDSAでは、患者がちょっと頭部を動かすと、骨の情報は消せないばかりか、余計な信号を

抗ARS抗体症候群

 抗Jo-1 抗体は多発性筋炎/ 皮膚筋炎の20 ~ 30%に件検出される。皮膚筋炎よりも多発性筋炎の方に多く検出される。抗PL-7、抗PL-12、抗EJ、抗OJ、抗KS 抗体とともに抗アミノアシルtRNA 合成酵素(aminoacyl tRNA synthetase: ARS)抗体の群に属し、間質性肺炎、多関節炎、mechanic's hand(機械工の手)などの臨床的特徴や疾患予後と関連している。これらを持つ症例は抗ARS抗体症候群と呼ばれる。 多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン(2020年暫定版)は こちら 。